2021.5.22.
3月29日、夕方の6時半頃だったと思う。ツイッターを開くと、何を受けてなのかは書かれていないけれどただ途方もない絶望や悲しみが含まれたツイートが並んでいた。
そこでは誰も何も具体的な言葉を用いていなかったけれど、直感的に頭に浮かんだものがあった。
そんな訳ないと、思い過ごしだと、そう言い聞かせながら震える手で開いたジャニーズネットで目に入ったのは「弊社所属タレント岩橋玄樹(King & Prince)に関するご報告」の文字だった。
この中に希望がないことはどうしてか、もう分かっていた。
震えが止まらなかった。
定まらない指先でその文字列を押して、その中身を読んでから暫くの記憶があまりないことにこれを書きながら初めて気が付いた。視野が急速に狭まって視界が真っ暗になっていくのを感じた。比喩表現ではなく、本当に目の前が真っ暗になった。
嘘だ。嫌だ。やめてくれ。そんな言葉ではちっとも足りない、巨大な絶望に押し潰されながらただただ1人の部屋で声を上げて泣いた。
泣きながら、色んなことが頭を巡った。
岩橋玄樹というアイドルにもう会えないこと、彼の人生からアイドルという天職が奪われたこと、きしいわにもう会えないこと、じぐいわにもう会えないこと、Princeが終わるということ、彼が自分のことを弱いと綴ったこと、謝られたこと、この先もずっとKing & Princeは5人だということ、それを愛する自信が私にはないということ。
本当に沢山の想いが頭を駆け巡るのに、一つ溢さずその全てが絶望だった。
FC動画がアップされたことを知って、何も考えずにそこに飛び付いた。
そこに希望を求めた訳でもなかったけれど、更なる絶望があるとも思ってはいなかった。
ただ、何も考えずに与えられたものを再生しただけだった。
きっとこれが救いになった人も大勢いたのだろう。
けれど、私にとっては絶望だった。
咽び泣き絶望の淵で悲しみに暮れている自分と、画面の中で前向きという言葉を何度も口にして笑い合う5人。
その温度差に、酷く頭が痛んだ。
こんな時でも、真ん中に立つのはリーダーでもなく、Princeでもない、平野くんだった。
海ちゃんが口にした「寂しい」の言葉の前に添えられた「ちょっと」という単語にささくれ立つ心があった。
Wゆうたの話に横から入ってきて仕切ろうとする廉くんの声が邪魔で仕方がなかった。
KINGと同じ温度感で笑うWゆうたが痛かった。
別にKINGの3人が悪いと言う話ではなく、3人グループとして活動した2年半もの時間がどちらにもあるのだから、KINGにはKINGにしか、PrinceにはPrinceにしか共有できない領域があって、その分だけ温度にも違いがあるはずなのに、5人の想いの全てを一緒くたにされるのが私は嫌だった。
結局、この12分の動画の中にWゆうたの本当の気持ちがあったとは思えなかった。
私は、Wゆうただけの言葉が聞きたかった。
思えばWゆうたは昔からずっと悲しみを全て包み隠して笑うような人だった。
そんな時に本当の気持ちをファンに分け与えてくれるのは岩橋くんだった。
岩橋くんの柔らかい言葉に相槌を打ってそれを肯定するWゆうたの優しい表情を通して、私たちは彼らの本当の想いを掬い取ることができた。
そんな岩橋くんは、もうステージにいない。
私は明確に、Princeの亡霊と化してしまった。
いや、もうずっと前からそうだった。
KINGとWゆうたの間に引かれた明確な格差。
Mr.KINGの色を濃くするグループの方向性。
演技仕事が来ないWゆうた。
他にも本当に、数え切れないほどに。
もう、PrincessがPrinceの亡霊になるには充分すぎた。
けれど岩橋くんが帰って来れば亡霊から解かれるかもしれないという希望だけは、確かに2年半ずっとあった気がしていた。
ただ、その希望が突然に絶たれただけだった。
これまでどうしたら良かったのだろう。
これからどうしたら良いのだろう。
待つことも、待たないことも、彼の負担になると分かっていた。
それでも私は待った。
帰ってきて欲しかった。
それは間違いだったのだろうか。
私の中でKing & Princeという5人グループがPrinceというグループを超える日はもう一生来ない。
King & Princeの5人がどんなに人気になったとしても、どんなに大きなステージに立ったとしても、あの小さな箱で輝いていた3人の青春が私の全てだった。
King & PrinceにあってPrinceにない唯一のものは3人の「未来の確約」だと思っていた。
「一生アイドル」と宣言してくれた3人の約束が叶う唯一の手段がデビューだと思っていた。
あの頃、必死に追いかけたデビューってなんだったんだろう。
私の中でPrinceと区切りを付けた日から、今日で3年になる。
3年の間に全てが変わってしまった。
思い返せば岸くんを好きになってから3年もの時間を何かが継続されたことなんてなかった。
Jr.が総個人戦だった時代に有形と無形の間を漂いながら岸くんの居場所は形を変え続けていたし、私も岸くん自身もそこに永遠を見出してはいなかったと思う。
初めて永遠を信じたいと思えたグループがPrinceだった。
初めて永遠を手に入れたと思えたグループがKing & Princeだった。
どちらもそんなことなかった。
どちらも、3年を超えなかった。
デビューしたって、諸行無常の世界からは抜け出せなかった。
もう取り返せない過去の永遠ばかりが眩しく美しく大きなものになって、これからずっと先の未来さえも靄がかかって見えるようになった。
岩橋くんがいなくなって初めて、岸くんの居場所を愛しいと思えなくなった。
ただ、少しだけ分かってもいた。
「玄樹はアイドルが天職だよ」
そう言って、岩橋くんが悩めばその手を強く引っ張ってくれた神宮寺くんが今ここで、その手を離した意味。
きっとそれはグループの為でもファンの為でもなく、ただ岩橋くんの為だったんだろうなって。
2年半、きっとずっと苦しみ続けたであろう岩橋くんを、もう楽にしてあげたかったんだろうなって。
そう分かってはいるけれど、でもどうしても受け入れられないのは、まだ岩橋くんと沢山の約束をしたままだったから。
「必ず戻ってきます。」
その言葉をずっとずっと胸に抱いていた。
ずっと信じていた。疑わなかった。
きっと岩橋くんも同じようにこの言葉を信じていたし、そこに嘘なんて絶対に絶対に絶対に無かったって痛いほど分かるから。
野球実況のお仕事をしたい。
東京ドームでコンサートをしたい。
ティアラを世界一のファンにしたい。
一生アイドルでいたい。
岸くんと神宮寺くんと、ずっと一緒にいたい。
他にも、本当に沢山、
いつかの君が話してくれた本当に沢山の夢、叶えてあげられなくてごめんね。
Princeという優しくて平和で世界一の空間を、守ってあげられなくてごめんね。
待ち続けて、苦しめて、ごめんね。
これから5人とは違う道を進む岩橋くんが、いつかその道の先で振り返って「この決断をして良かった」って笑顔で言えるくらいの幸せを手に入れること、それだけが私の希望であり、償いです。
そして私はここに残って、King & Princeという5人組を心から愛せる自信もないまま、岸くんへの好きを捨てることもできず、きっとこれからも岸くんの隣に岩橋くんの姿を思い浮かべて、もうそこにはいないPrinceを思い浮かべて、生き地獄のように泣き続けると思う。
前を向く5人を後ろ向きでしか見られないようなら本当は離れるべきなんだと頭では分かっているのに、担降りという言葉が幾度となく頭を巡るのに、岸くんを見れば好きが溢れて止まらなくなって、その度にこれはこちら側からハサミで簡単に切れる類いの感情ではないと思い知らされた。
そうして、ズルズルとここまで来てしまったから。
玄樹くんがアイドルじゃなくなってからもうすぐで2ヶ月。ずっと空気の薄い場所を生きているような感覚がしている。
この苦しさも少しずつ時間が癒していくものなのか、それとも時間の経過に比例するように更に辛くなるものなのか分からないけど、この苦しさとの向き合い方を少しずつ見つけていきたいと思う。
纏まりも無くたらたらと書き連ねてしまったけれど、ただこれが私の想いの一部です。